ガス給湯器の排気口のタイプは変更できる?


ガス給湯器には、全く同じ機能のものであっても、設置されている状況によって排気のバリエーションがいくつも用意されています。

排気のバリエーションとは、燃焼後の排気ガスが出てくる排気口の形状や位置、もしくは排気ファンの能力の違いなどで分けられている給湯器の種類のことです。
 
この排気バリエーションの選択を誤ると、現在設置されているガス給湯器からの取替えができなかったりします。
なかにはパッと見ただけでは違いがわからないようなバリエーションもあるので、慎重に選ぶ必要があるのです。

排気口の形状や位置などのバリエーションの違いによっては、数万円の価格差が出てくることもあります。

このページにたどり着いた人の中には、
「排気口が違うだけなら安いガス給湯器のほうにしたいんだけど駄目なの?」
とか、
「見た目が同じだから安いほうでも大丈夫なんじゃない?」
といった疑問をもっている人も多いのではないでしょうか。

今回はガス給湯器の排気バリエーションについて、違いや互換性について書いてみたいと思います。



設置状況によるガス給湯器の排気口の違い

ガス給湯器が設置されている状況というのは、大きく分けて2つあります。

それは、

  • 戸建て住宅
  • 集合住宅(マンションなど)

の2つです。

どちらも給湯器が屋外に設置されている場合と、屋内に設置されている場合とがあります。
 
戸建て住宅の場合は、ほとんどが屋外壁掛け設置か据置設置です。
屋内式を除くと排気バリエーションは一つしかないので、ほとんど迷うことはないでしょう。

マンションなどの集合住宅には、すべての排気バリエーションの設置が考えられるので、しっかり見極める必要があります。

ガス給湯器の排気口のバリエーションの違いは、他のバリエーションへの変更が効かないことが多いので、特に給湯器本体だけをネットで安く買って、工事は業者に頼もうと考えている人は注意が必要なんです。

給湯器メーカーは基本的に返品を受け付けてくれないので、ネットショップで購入した場合もまず返品は受け付けてくれません。
間違えて違うものを購入すると、返品もできずにオークションで安く売らなければならないなんてことになりかねません。

まずは屋外用なのか屋内用なのかを確認してください。
戸建ての場合でも集合住宅の場合でも同様です。

なかには、給湯器を設置した当初は屋外用で良かったものでも、リフォームや周りの環境の変化によって、屋内用に変更して排気筒を設置しなければならなくなっているものを見かけることがあります。

  • 給湯器の周りに壁や屋根を作って小屋囲いの状態になっている場合
  • 給湯器の正面に可燃性の壁や腐食性のあるフェンスなどが設置されている場合

などは、同じタイプの排気口の給湯器に交換できない場合があるので、特に注意が必要です。



ガス給湯器の排気ガスは重要で難しくて、怖い

ガスというと「爆発したら怖い」などと思われがちですが、燃料としてのガスよりも最も恐れるべきは排気ガスなんです。

もちろん、ガス漏れも命にかかわる重大事故につながる危険性はありますが、そもそも事故自体が起きにくいのです。

ガス工事は、施工時にしっかりした経験と知識のもとに行われれば、余程その後に不具合を起こすことは考えにくいものです。
工事後の腐食や損傷が原因のガス漏れ事故が起こりにくいよう、さまざまな規定や材料、工法によって考慮されているからです。

対して、ガス給湯器の排気ガスは注意が必要です。

給湯器のなかでも特に排気筒を接続するタイプのものは、十分な知識と経験をもって設置工事をしないと重大な事故につながる恐れがあります。

排気ガスに関する法律については、「特定ガス消費機器の設置工事の監督に関する法律」(通称”とっかんほう”)というものがあります。
ところが、施工時にいくらこの法律に定める基準に従って施工しても、その後の周りの環境の変化で、”生命に関わる重大事故につながる”状況に変化する可能性があるのです。

周りの環境の変化とは、

  • 小屋囲いなどで排気の逃げ道をふさいでしまった場合
  • 排気出口になにか障害物が設置されてしまった場合
  • リフォームなどによって部屋内に排気が流れ込みやすくなってしまった場合

などの状況が考えられます。



排気筒と煙突の違い

給湯器の排気方式(バリエーション)の変更


若干余談になりますが、排気筒と煙突の違いって判りますか?

これは、法律によってその定義が違っているのです。
いろいろな法律がありますが、給湯器などのガス機器設置に関する法律で言うと

  • 「ガス事業法」
  • 「建築基準法」

の2つがあります。

建築基準法では、排気筒という言葉も煙突という言葉もどちらも明確に区別され使用されていますが、ガス事業法では区別なくどちらも排気筒と呼ばれます。

建築基準法上での区別の仕方は、ガス機器と直接接続されているか、間接的に排気されているかということです。

建築基準法上での区別

  • 煙突:ガス機器と直接接続されているもの
  • 排気筒:ガス機器から離れて設置されているもの

例えば、給湯器から出ている銀色の円筒形のものなどが煙突、換気扇などから外に繋がっている配管が排気筒といった具合です。
 
私のようなガス機器の設置などを行っている業者は、給湯器に接続されているものは排気筒と呼んでいます。

ちなみにガス事業法などで「排気ガス」と呼ばれるものは、建築基準法上では「廃ガス」と呼ばれており、言葉も漢字も違っています。
 
法律ってちょっとややこしいですよね。



戸建て住宅のガス給湯器の排気バリエーション


戸建て住宅ではあまり排気バリエーションで迷うことはないと書きましたが、それでも屋内用を含めればいくつか選択肢があるので、一応書いておこうと思います。
 
戸建て住宅で考えられるのは、屋外設置では「屋外壁掛設置」「据置設置」がほとんどを占め、排気は前方排気の標準タイプになります。

壁掛けの排気口が標準のタイプはもっとも設置台数が多いので、需要と供給の原理で販売価格が最も安くなっています。

戸建ての屋内設置の給湯器では、排気は排気筒接続のもののみで、「強制排気(FE式)」「強制給排気(FF式)」の2つがあります。

台所のガス瞬間湯沸器に排気筒は必要ないの?
比較的古い住宅の台所に設置されているガス消費量の小さな瞬間湯沸器などは「開放式」といって、排気筒の必要な機器からは除外されています。

屋外と屋内の法律上の扱いの区別

よくあるのが小屋囲いで、小屋囲いの中は屋内扱いとなり、屋内用給湯器を設置しなければいけないことになっています。

では、屋内と屋外の扱いの区別は、法律上どう規定されているのでしょう。
 
まず、四方の壁と天井で完全に囲われている場合は、完全に屋内扱いとなります。

四方の壁と天井がある場合でも、ガス機器の排気口から10cm以上上方に高さ20㎝以上の開口が3方の壁面に設けられていると屋外扱いとすることが出来ます。

ただし、四方の壁と天井で完全に囲われていても、屋内の居室等の空間と窓や扉などによって直接つながっていない場所は屋外扱いとしてもいいことになっています。

給湯器の排気口に上方排気カバーの取付は必要?

給湯器の排気方向に隣家の壁やブロック塀などがある場合は、上方排気カバーを取り付けることで排気の方向を変えることができます。

給湯器の上方排気カバー
↑↑↑上方排気カバー

他に横向き排気カバーというものもあります。

給湯器の横向き排気カバーの取付
↑↑↑横向き排気カバーを取付けた状態

上の写真のようにマンションのベランダで天井に近い場合は、上向き排気カバーが使用できません。

しかもすぐ前方にマンションの構造壁があるため、横向き排気カバーを取り付ける必要があります。
この状態で排気カバーを取り付けないと、給湯器が排気ガスを吸い込んで燃焼に使ってしまうので、バーナーの燃焼不良や給排気ファンを劣化による故障の原因になってしまいます。



集合住宅の給湯器の排気バリエーション

マンションなどの集合住宅では、多くの場合ガス給湯器はPS(パイプシャフト又はパイプスペース)に設置されています。

もちろんベランダに壁掛け設置、据置設置されている場合や、屋内に設置されている場合などもあります。
 
屋外設置には

  • 「壁掛設置」
  • 「PS設置」
  • 「据置設置」

の3種類があります。

そして、「PS設置」のなかにいろいろな排気口のバリエーションがあります。

「PS設置」の排気バリエーションとしては

  • 「PS標準」
  • 「PS扉内」
  • 「PSアルコーブ」
  • 「PS扉内前方排気延長型」
  • 「PS後方排気延長型」
  • 「PS上方排気延長型」
  • 「PS給排気延長型」

などがあります。

排気延長型とつくタイプの給湯器は、工事に手間がかかることが多く、その分どうしても工事代が高くつく場合が多くなります。

メーカーによって排気バリエーションの呼び名が若干違ったりしますが、給湯器の前面パネルに排気口がない給湯器は全て延長型です。

[マンションのPS設置のバリエーション]

排気タイプ 標準 扉内 アルコーブ 前方排気 後方排気 上方排気 給排気延長
前面の様子
全体像  

給湯器の排気のバリエーションはいくつかありますが、原則的には現状と同じタイプのものに交換します。

「PS扉内設置」タイプと「PS前排気延長」タイプは一見すると同じもののようですが、排気ファンの風量などが違ったりします。

「前排気延長」タイプは「扉内設置」タイプとして設置することは可能ですが、逆に「扉内設置」タイプのものは必ずしも排気延長ができるとは限りません。

「扉内設置」タイプのものには、排気延長可能なものと不可なものの2通りあるので注意が必要です。

「アルコーブ設置」タイプは「標準設置」の給湯器に横向排気カバーという部材を取り付けただけのものなので、標準排気のバリエーションに替えられないこともありませんが、滞留した排気を再び給湯器が吸い込んで故障を誘発したり、排気が含む水分で玄関周りを錆びさせたりする可能性があります。

標準設置タイプと上方排気タイプ・後方排気タイプの金額の違い

標準設置タイプの給湯器と上方・後方排気タイプの給湯器の金額の違いをネットショップで比較してみましょう。

↓↓↓リンナイの24号PS標準設置型です。

↓↓↓リンナイの24号PS上方排気延長型です。排気方式が違うだけでこんなに金額が違うんですよね。

最も給湯器本体の価格が高いのが、「後方排気延長型」と「上方排気延長型」で、更に交換工事代も他のタイプよりも1万円~2万円ほど割高です。

この2つの排気バリエーションこそ標準タイプなどに変更できると、金額的にかなり助かるのですが、余程条件が良くないと変更はできません。

  • 給湯器の前面にPSの扉がないこと。
  • PSの廊下を挟んだ反対側に壁が無く開放状態であること。
  • マンションの管理組合の規約などで規制がないこと。

などの条件が揃わないと難しいでしょう。

基本的にはすべて屋外用なので、特監法の適用対象外で排気バリエーションを変更しても法律上は問題ないのですが、マンションなどは規約上の確認を必ずすることをお勧めします。

 

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